ランニング好きライトゲーマー虫虎(小説家志望)の日記

ゲーム、ランニング、文章書き、読書、昆虫、子育て、オナ禁、映画、人間関係、音楽、僕が考えていることなどを書いている雑記ブログ

小説「ブレイブ・ストーリー」感想

 【前置き】

どうも、虫虎です。明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。さて、今回は宮部みゆきさんの小説「ブレイブ・ストーリー」の感想を語っていきたいと思います。舞台はゲームのRPG世界。ゲームの世界を冒険している気分になってワクワクしながら読み進めていくことができる楽しい小説です。以下はネタバレしていますので、未読の方はご注意ください。では、宜しくお願いします。

 

【あらすじ】

 穏やかな生活を送っていた小学生三谷亘に、突如両親の離婚話が降りかかる。再び穏やかな生活を取り戻したいと願った亘に運命を変えることのできる世界「幻界」への道が開かれる。
広大な土地「幻界」で、亘は水人族のトカゲや猫族の女の子、ドラゴンたちと旅をする。果たして、彼らにどんな冒険が待ち受けているのだろうか。そして、旅の終わりには何が待ち受けているのだろうか。


【作品の魅力的な所】

 ゲームのRPG世界を冒険してる感覚が楽しいです。もしもゲームの世界に入ってしまったらという世界観がゲーム好きな僕にはたまりません。

 

 広大な幻界の世界で、水人族のキ・キーマと猫族のミーナと宝玉を探す旅は、魅力的な風景描写、個性豊かな登場人物との関わり合い、多種多様な場所への冒険があって、ワクワクしながら読み進めていくことができます。

 

 そして、旅を通して頼りなかったワタルは、どんどん逞しくなってゆきます。その姿を読み進めていくと自分が誇らしい気分になります。現実世界でつらい経験をしたワタルが、幻界での冒険を通して、成長して出した結論に僕は感動しました。

 

「僕は最初、何もかもなかったことにできれば、それで済むと思っていた。また幸せになれるって。でも違うんだ。それだけじゃ、また別の悲しみや苦しみが訪れたときに、前と同じことになっちゃうだけなんだ。運命を変えるってことは、嫌なことを消してしまうことではないんだ。出来事は消せても、僕の心は消せないんだから。」

ブレイブ・ストーリーより)


 ワタルの成長が伺えるのが嬉しい。運命を変えるだけではダメなんだと。自分自身の心が変わらなければ意味がないんだと読者に大切なことを教えてくれてます。

 

 宮部みゆきさんの描く優しくて勇気のある冒険物語を十分に堪能することができますね。

 

【優しい世界観を感じれる】

もう1つ、「ブレイブ・ストーリー」は 優しい世界観を持っていると思います。ワタルと旅をするキ・キーマとミーナの友情に感動するシーンが沢山あります。3人の関係性が物語の優しさを彩ってくれています。

 その中でも特に僕のお気に入りの場面を紹介します。旅人の2人の内、1人が人柱に選ばれてしまうことを隠していたワタル。ミツルとの会話で、キ・キーマとミーナにそのことがばれてしまう。そのときの、戸惑った2人の反応、優しさに、僕は心打たれました。2人の仲間の優しさが滲み出てくる凄く好きな場面です。

 

【宮部先生の素敵な文章を感嘆する】

 宮部みゆき先生の文章に魅了されます。感嘆してしまう表現が沢山ありました。中でも「ブレイブ・ストーリー」では、ゲームに例えた文章表現や幻界の風景描写に僕は特に感銘を受けました。

 

 テレビゲームみたいに攻略本があればいいのに。この部屋は、わざわざ入っても手強い隠しボスがいるだけだ、レベルが五十を超えないうちは、無視して通りすぎた方がいいって、教えてくれるような。

ブレイブ・ストーリーより)
 このような小説の世界観にあった巧くて素晴らしい例え表現があります。

 

 関所の建物がマッチ箱のように見える。こんもりとした森はブロッコリーみたいだ。足の下に広がるパノラマは、ワタルを魅了した。一面の緑と大地の色。そして、遠く遥かに散らばる町。点在する湖沼はまるで手鏡。絹糸のような川の流れ。

ブレイブ・ストーリーより)

 上空からの幻界の眺めが頭の中に広がってきて、凄く心地好い気分になる素晴らしい表現です。

 

【読後感想】

 読後は非常に爽快。物語に纏まりを感じました。リリスの街の差別やティアズヘブンの街の悲しみがすべて解決していた訳ではなかったけれども、そのどうしようもなさ、やるせなさも含めて、すべてワタルの心なんだ、人の心とはそういうものなんだと僕は受けとりました。
 幻界の冒険は、ゲームの世界を旅している感覚になり、とても楽しめました。訪れる街それぞれの特徴、出会う人々の個性、世界の美しさ、ダンジョンの薄気味悪さ、敵の恐ろしさなど、どれもがワタルの冒険を彩っていました。

 皆さんはどんな感想を持ちましたか。僕は物語の世界に入ることの心地好さや楽しさを再認識させてくれる作品だと感じました。

 

 

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)