ランニング好きライトゲーマー虫虎(小説家志望)の日記

ゲーム、ランニング、文章書き、読書、昆虫、子育て、オナ禁、映画、人間関係、音楽、僕が考えていることなどを書いている雑記ブログ

小説「月の影 影の海」感想

【前置き】

 どうも、虫虎です。今回は小野不由美先生の小説十二国記シリーズの第1作目「月の影 影の海」について語っていこうと思います。例の如くネタバレありますのでご注意ください。では、宜しくお願いします。

 

【あらすじ】

 中嶋陽子は毎夜悪夢をみていた。夢の中では、黒い大型の獣達が迫ってくる。悪夢に悩む日々に突如、ケイキという男が現れ、事態は一変する。
「あなたは私の主、お迎えにまいりました」と。
 何がなんだか解らないまま、海に映る月の光をくぐり抜け、辿り着いたところは、地図にない国。
 そこで、陽子を待ち受けていたのは、異形の獣達との戦い。陽子を異界に呼んだのは誰なのか。帰る当てのない陽子の孤独な戦いが始まる。


【作品の魅力】

 どことなく中国に似た異国の地を冒険するRPG感と、終わりなき異形の者達との戦闘で絶望の淵に追い込まれていく陽子の行く末が気になり、吸い込まれるように読み進めていける作品です。異国の地と先の読めない展開によって物語の世界への没入感が深いです。

 

【陽子に凄く感情移入しました】

 心優しいけれども、いじめられている人を助けることはできない陽子の性格に僕は仲間意識を感じずにはいられませんでした。

 

「中嶋は誰とでもうまくやっていた代わりに、誰とも特別親しくなかった。誰にとっても都合のいいだけで、それ以上ではなかったんだと思います。」

(「月の影 影の海」より)

 

 僕は陽子に親近感を抱いていました。彼女は日本にいる頃、人と距離を置き、壁を作っていました。異国の地へ流されて、辛い冒険の旅を経て、彼女が経験したことは非常に大きいものでした。物語の最初と最後では、彼女の考え方や心の持ちようが別人のように変わっていて、感情移入している僕はその成長過程を読み進めていくと嬉しく爽快な気持ちになっていました。

 

【感動した場面】

 中嶋陽子は絶望の淵に立たされ、人を信じることができなくなっていました。ついには危険に晒された命の恩人である楽俊を見捨てて、逃げてしまった陽子だけど、自分の愚かさに気づくことができました。

 

「陽子自身が人を信じることと、人が陽子を裏切ることは何の関係もないはずだ。陽子自身が優しいことと他人が陽子に優しいことは、何の関係もないはずなのに。」

(「月の影 影の海」より)

 

 人は人、自分は自分。自分が強くなりたいと願うようになった陽子の心情変化に感涙しました。そうなんだ、見返りや恩を求めるのでなくて、自分がそうしたいからすればいいんだと。他人の顔色ばかりを伺って行動してきた陽子の気持ちの変化、 自分は自分として行動することの大切さ。そのためには強さが必要だと心の底から思い至った場面に僕の胸は高鳴りました。

 

【人は人、自分は自分】

 生きていく上で、とても役に立ちそうな考え方なんだけど、実行に移すのは難しいことと感じます。人は自分がやったことに対して、それ相応の見返りが欲しくなってしまうし、もし誰かにやられたら、やり返したくなってしまうのが普通の感情だと思います。
 しかし、自分が与えたものの分だけ返してほしいと思わず、自分がやられた分だけやり返してやると思わないという考え方は、結果的には自分を良い方向へ連れていってくれる考え方だと思います。なぜなら、自分自身が消極的な気持ちにならなくて済むからだです。だから、「人は人、自分は自分」という考え方を持つことは非常に大切だと思うし、日々意識してその価値観を得ることがてぎるように努めることは凄く大事だと僕は考えました。

 

【まとめ】

 読後感は晴れやかなものでした。自分に置き換えることのできる主人公が強くなり、成長した姿を読むことができて、嬉しくなっていました。僕にとっては感情移入できた心に残る一冊となりました。

 

月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 文庫
 

 

月の影  影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)

  • 作者:小野 不由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/06/27
  • メディア: 文庫