【前置き】
どうも、虫虎です。今回は、小野不由美先生の十二国記シリーズの4作目であります「風の万里 黎明の空」の感想を語っていきます。ネタバレありますのでご注意ください。宜しくお願いします。
【あらすじ】
慶国の王となった中嶋陽子。慶国のことを何も知らない彼女は自分の不甲斐なさに落ち込んでいた。
蓬莱から才国へ流れ着き、言葉も分からず苦行を強いられ、我慢し暮らしていた鈴という少女がいた。
悪政を働いていた芳王である父親が暗殺され、王家の地位を剥奪され国民に虐げられてきた祥瓊という少女がいた。
3人の少女が悩み苦しみ、もがきながら、何の巡り合わせか出会うことになる。彼女たちは物語は何処へ向かうのだろうか。
【登場人物の内面が掘り下げられている】
「風の万里 黎明の空」では、3人の少女が中心となって物語が進んでゆきます。彼女たち3人共、心に悩みや不満、将来への不安を抱えています。
慶国の王となった中嶋陽子は、慶国のことを何も知らない。だから、自分には何を考えて行動すればいいのか、何ができるのか分からない。次第に官や慶麒の顔色を伺うようになり、迷いの森へ入り込んでしまい、思い苦しむこととなります。
鈴は、突然言葉も分からない土地へ流れ着き、何とか主に仕えることができるも苦行の日々を送っていました。彼女自身、自分の境遇に嘆き不平不満をこぼすばかりでした。鈴が前を向いて生きるには何が必要なのでしょうか。
祥瓊は、悪王の娘がどういう立場にあるのかを理解できず、自分の置かれている境遇を他人のせいにするばかりでした。祥瓊は何を認めて何をしなければならないのでしょうか。
彼女たちが、それぞれ思い悩み旅をしながら、考え出した答えや行動や姿は心に訴えかけてくれるものが沢山ありました。そういった登場人物の内面部分を深く考えさせてくれるところがこの小説の魅力の1つであると僕は感じました。
【清秀と楽俊が良いこと言ってる】
鈴と旅を共にする清秀と祥瓊と旅を共にする楽俊が彼女たちへ大切なことを語ってくれてます。僕はその言葉たちに凄く共感を覚えて、沢山の気づきを得ることができました。何度も何度も首肯してしまう箇所があったのが良かったです。自分が「あーそうだよな」って思えるところが見つかると嬉しくなりますね。
おれ、そういうの、やなんだよ。人よりも不幸なこと探してさ、ぜーんぶそれのせいにして居直って、のうのうとしてるのって。
ばかみてえ。ねえちゃん、単に人よりも不幸なの自慢してだけじゃねえの。別に不幸じゃなくても、無理やり不幸にするんだよな、そういうやって。
(「風の万里 黎明の空」清秀の言葉より)
不幸自慢ばかりして現実から逃げていた鈴が前を向けるようになったのが良かったです。
知ってなきゃいけなかったんだ。公主の祥瓊より、おいらのほうが芳に詳しい。それって襤褸を着るより恥ずかしいことだって、わかってるか。
責任を果たさずに手に入るものなんか、ねえんだよ。あったとしたら、それは何か間違ってる。間違ったことを盾にとっても、誰も認めちゃくれねえんだ。」
(「風の万里 黎明の空」楽俊の言葉より)
知らないといけなかったこと、当たり前だと思い込んでいた暮らし、自分が果たさなければならなかった責任、それらを見つめ直す旅が祥瓊には必要でした。
【読後、前向きな気持ちになる】
3人の少女たちがいつどこで巡り会い何が起こるのか。複雑に絡み合う運命の糸を辿っていくのが楽しくてしょうがなかったです。最終的に出会い、抗い、前を向く彼女たちの成長を読み進めてくいくと凄く爽快な気分になりました。
【まとめ】
物語展開の重厚さ、面白さは勿論のこと、登場人物の内面の変化を感じることができるのがこの小説の魅力であると思います。
読んだことのない方は是非御一読してみては如何でしょうか。