【前置き】
どうも、虫虎です。フィリップ・プルマン先生の小説「ライラの冒険」の感想を書きます。「ライラの冒険」は「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」「琥珀の望遠鏡」の三部作で構成されています。今回は三部作それぞれの感想です。盛大にネタバレしてますが、よろしければお付き合いください。宜しくお願いします。
【黄金の羅針盤】
まずは、「黄金の羅針盤」の感想です。
【ダイモンが可愛い】
神話的ファンタジーさに惹かれました。
特にダイモン(守護精霊)の設定が凄く面白かったですね。知らない動物の画像を検索しながら読み進めていくのが楽しいんです。ダイモンは、主から離れることができず、主が大人になると、心の属性を表すように姿を変えることができなくなる。
「こうして罪が生まれたんだ。罪と恥と死が。彼らのダイモンの姿がさだまった瞬間に、罪が生まれたんだ」
(「黄金の羅針盤」より)
どういうことでしょうね。わくわく。
【ライラの世界は………?】
ダイモンという人間一人ひとりに心の通じあっているパートナーがいる。それは、凄く心強く安心できることであるはずなのに、この世界には、なぜか悪人ばかりしかいない………。なぜだろうか。
主人公も嘘つきが得意な少女ライラであります。ライラの武器の1つである嘘つきが効いていて、物語が面白くなっていますね。
逆にダイモンが身近に見えていて、心に余裕ができるから故に、悪い人(?)になってしまうのでしょうか。
【イオレクというクマさん】
いや、クマさんとかいう可愛らしい動物じゃあないです。鎧熊と表記した方がしっくりきます。
そして、イオレク・バーニンソンの戦闘シーンが緊迫感があって引き込まれました。第一部の見せ場ではないでしょうか。
【物語の魅力の1つ】
キリスト教神話や英国の暮らしをベースに物語が作られていて、知っているような世界の中に何か違うものが組み込まれていて、不思議な世界観になっているのが、読み手を考えさせることになります。そこがこの物語の魅力ですね。あとがき読んでそうなんだと思いました。
本書は、当時の文化活動の中心だった十九世紀の英国の技術や風俗や暮らしの記録をベースにしながら、ひと味ちがうもうひとつの歴史世界をつくりだし、お茶目で性悪のお転婆娘がのびのびと活躍するのを追いかけながら、神学や哲学に象徴される「知識」のゆくえを物語というかたちで思索しているように思います。
(「黄金の羅針盤のあとがき」より)
【神秘の短剣】
次に「神秘の短剣」の感想です。
【壮大さが加速していく】
物語は壮大さを増し続け、展開していく。ライラが過ごしている世界とは似ているけど違う別世界でのお話です。主人公のウィルが物語の最初で人を殺してしまうのに衝撃を受けるのも束の間、大人を石にしてしまう魔物(スペクター)や魔女や謎の天使など色々な種族が現れて物語の規模はどんどん大きくなっていきます。そして、本書に散りばめられている謎の正体はなんだろうか。次回作が気になる終わり方で第二部は終了します。
【神秘の短剣というロマン】
「黄金の羅針盤」に続いて、「神秘の短剣」も面白い道具だなと思いました。こういった神秘的な道具にはロマンを感じざるを得ないですわね。
【衝撃を受けた~ネタバレ~】
個人的に驚いた場面は、ウィルの探している父親ジョンパリーがライラの世界にいるストラニラウスグラマン博士だったことを知った時です。読んでいて隕石落ちたような衝撃を受けました。
【スコーズビーという渋い男】
個人的に好きな場面は、僕のお気に入りの登場人物「気球乗りのリー・スコーズビー」がグラマン博士を護る為に、防衛戦を行うところです。スコーズビーさんは超人的な人や人知を越えた存在が沢山いる世界の中で、気球乗りや拳銃のテクニックをもっているものの、基本的には普通の感覚の人間であるようにかんじられたところが愛着の湧きました。
そんな彼が彼のダイモンと必死に命懸けで闘う場面は本書の見所であったと僕は思います。
【琥珀の望遠鏡】
最後は「琥珀の望遠鏡」の感想です。
【ラブストーリーは突然に】
ライラとウィルは大人に成るにつれて、愛の意味を知ります。その大きな愛の生まれでる力が世界を救う鍵となる。壮大に広がった物語を収束させるものが愛の力というのが、ファンタジー小説として凄く良いなと思って読んでいました。
「愛し合う者たちはすべてこの至福の発見をしてきたのだろうかと思いながら、ふたりは横たわった。地球はゆっくりとまわり、夜空には月と星がかがやいていた。」
(「琥珀の望遠鏡」より)
【気になるゴメス神父の動向】
カナブンのダイモンを持つ狂信的な思想のゴメス神父が物語の合間にこそこそ動いている。不穏な動きを繰り返すゴメス神父の行く末が気になるんだ。
まさか、そういう終末を迎えるとは………。
【ミュレファという生き物】
ミュレファという生き物に魅力を感じますね。
人は偶然か必然なのか、火を起こし、知能を持ち、農耕をして、数ある動物の中で優位な立ち位置を獲得した。もしも、世界の環境が違えば、ミュレファのような車輪を持つ生き物が反映することもあり得るのか。
ミュレファの世界を読み進めていくのが楽しかったですね。
「緑濃く繁った枝葉につつまれ、葉の間からあざやかな青空がのぞく。そよ風が肌をなで、花のかすかな香りが、かぐたびに、よろこびをあたえてくれる。葉のサラサラとなる音、何百羽もの鳥のさえずり、海岸の波のかすかなささやきに、すべての感覚がなごみ、豊かになる」
(「琥珀の望遠鏡」より)
【地上の楽園】
「この世の人生より天国が重要だなんて思って生きちゃいけないの。あたしたちがいまいるところが、いちばん重要な場所だから」
(「琥珀の望遠鏡」より)
未来のことを、天国へ行った後のことを考えるものいいけど、折角地上に生を受けたならば、地上での暮らしを楽しむものいいものではないか。
フィリップ・プルマン先生が伝えたかったことの1つではないでしょうか。
【まとめ】
以上、ライラの冒険シリーズ三部作のそれぞれの刊の感想でした。思ったことを書き殴ったまとまりのない感想でしたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。次回は、ライラの冒険シリーズの全体的な感想を書きます。ありがとうございました。