昆虫好きライトゲーマー虫虎の日記

ゲーム、昆虫、読書感想、子育て、文章書き、オナ禁、映画感想、人間関係、音楽、僕が考えていることを書いている雑記ブログ

小説「常野物語シリーズ」感想

【前置き】

 どうも、虫虎です。今回は恩田陸先生の小説「常野物語シリーズ」の感想を書きます。「常野物語シリーズ」は現在「光の帝国」「蒲公英草紙」「エンド・ゲーム」の3冊が出版されています。今回は、3作品毎の僕の感じたことを書き連ねます。ネタバレありますが、よろしければお付き合いください。宜しくお願いします。

 

 

【光の帝国】

  常野物語の1作目ですね。

 

 膨大な書物を記憶する力、遠くの出来事を知る力、遠くの音を聴く力、近い未来を知る力、念じるだけで火を起こすことのできる力、長寿の力と不思議な力を持つ一族がいた。「常野」から来たという彼らは、穏やかで知的で、権力を持たず、群れず、普通の人々の中でひっそりと暮らしていた。そんな彼らの短編集でございます。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章ですね。

 


【作品の魅力】

 「常野」を題材にした短編集であって、一つひとつの物語は独立していて、時代も切り口もバラバラなのに、短編のピースを合わせてみると、全ての物語が常野という糸で繋がって、壮大な物語に見えるところがこの小説の面白味だと思いました。

 

 それに加えて、情景描写が美しく、登場人物が優しい。そして、「常野の力」という不思議な力。残酷な展開もあるものの、常野一族の人々の穏やかで哀愁のある振る舞いや姿に優しい気持ちになります。

 


【感銘を受けた文章】

あのさ、僕の尊敬するチェロリストが言ってたんだけどね。音楽にすれば全てが美しいって。憎しみも嫉妬も軽蔑も、どんなに醜いおぞましい感情でも、それを音楽で表現すればそれは芸術だからって。だから音楽はどんなときでも味方なんだって。武器なんだって。心変わりしない。浮気もしない。いなくなったり死んだりしない。

(「光の帝国」より)

 

 この文章に凄く感銘を受けました。この文章に出会えただけで、この本を読んで良かったなーと思えました。音楽の良さ、本質が伝わってきて、音楽はやっぱりいいなという気づきを得ました。悲哀や恐怖も音楽にすれば、綺麗に芸術になる。

 


【読後感想】

 読んだ後は、とても優しく暖かい気持ちにななりました。常野の人々が魅力的で優しいからだと思います。

 

 権力に固執せず、自分の功績を自慢せず、知性や能力を持ち、穏やかで、優しさに満ちたできた人物になりたいなと思ってしまいました。そんなことを考えさせてくれた優しい一冊ですね。

光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

 

 

【蒲公英草紙】

 常野物語の2作目ですね。

 

【読後感想】

 蒲公英の綿毛のような優しい物語ですね。

 

 20世紀初頭の田舎の自然豊かな風景描写と真面目で実直な人々が心地好い。ゆっくりと流れる時代の中に確実に忍び寄る何か判らない影を感じつつ、不思議な力を持つ一族が現れることで物語は動き出す。ひっそりとしている彼らだがその存在感は大きい。彼らの存在は優しい世界に不思議を加えてくれる。そんな世界観が綿毛のようにふわふわと居心地良いですね。

 


【感動した場面】

 身体が生まれつき弱いが聡明で美しい聡子様の気丈で立派な振る舞いには泣かされました。

 

 身体が弱く村人達の為に何もできないことを嘆いていた聡子様の生き様は儚くも強くて誇らしかったですね。

 

 暖かく真っ直ぐな世界はとても読み心地が良かったです。

 

 

【感銘を受けた文章】

自分が幸せであった時期は、その時には分かりません。こうして振り返ってみて初めて、ああ、あの時がそうだったのだと気付くものです。

(「蒲公英草紙」より)

 だからこそ、幸せをその都度確認してみる作業は凄く大切ですね。

 

次々とやってくる新しいものに浮かれている一方で、葬り去るには懐かしく心地好いものがたくさんあるような気がするのに、否応なしにながされていく。

(「蒲公英草紙」より)

 20世紀初頭の時代背景を色濃く感じる表現で良いなーと思います。そういう時代の雰囲気だったのかなーと想像が膨らみます。

蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)

蒲公英草紙 常野物語 (集英社文庫)

 

 

 

【エンド・ゲーム】

 常野物語シリーズの第1作目の短編「オセロゲーム」の続編に当たる話ですね。常野物語の3作目。

 

 

【あらすじ】

 得たいの知れない物体と精神世界のような空間で常に戦いを強いられている常野の力を持つ拝島時子とその母親瑛子。得たいの知れない物体との戦いは、オセロゲームの如く、「裏返す」か「裏返される」かで勝負が決まる。「裏返される」とエンドしてしまうゲームに巻き込まれている。

 

 「裏返す」「裏返される」とは何なのか。数年前に失踪した夫の行方の手掛かりを手に持ち出掛けた瑛子は眠ったまま起きなくなってしまう。

 

 時子の不可思議な物語が突如として動き出す。時子は母の瑛子を目覚めさせる為に常野の一族であるという「洗濯屋」と名乗る火浦の元を訪ねるのであった。

 


【感想】

 常野の人々は、普通の生活を送りつつ、何か不思議な出来事を体験している。「裏返す」とか「裏返される」とか「包む」とはどういうことなのか。僕には聞き馴染みのない単語の意味から巻き起こっている不思議な世界がちょっと恐ろしかったりしますね。

 

 その現実にはないだろうけど、「いや待てよ」、もしかしたらあるのかもしれない、僕が知らないだけかもしれないような物語を垣間読む楽しさを味わえる作品ではないだろうかと僕は読んでいて思いました。

 


【最後の場面の僕なりの理解】

 拝島家の人々にとって、もうオセロの駒の色が裏表ないように、実は「裏返す」とか「裏返される」ということに意味はなくなっていました。

 

 拝島家の人達はその裏返されるかもしれないという緊迫した日々から解放されていたが、同時に生きる意味を失うこととなっていました。大きな力を持て余し途方にくれていたのだ。

 

 だから、彼らは自らに物語の記憶を取り付けて、偽りの日々を敢えて過ごしていました。そして、その物語の中で強大な常野の力を持つ時子と「洗濯屋」の火浦が結ばれることによって、何か新たなゲームが起こることを期待しているのかもしれないですね。強すぎる人達は生きる意味を欲していたのです。

 

 僕なりにそう理解しました。

 

面白かったです。

エンド・ゲーム 常野物語 (集英社文庫)

エンド・ゲーム 常野物語 (集英社文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2009/05/20
  • メディア: 文庫
 

 

 

【まとめ】

 以上、常野物語シリーズ3作品の感想でした。

 

「不思議」を感じることができる小説ですね。

 

 ここまで読んでくださってありがとうございました。