昆虫好きライトゲーマー虫虎の日記

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小説「持たざる者」感想

【前置き】

 どうも、虫虎です。今回は前回の続きで金原ひとみ先生の小説「持たざる者」の感想をもう少し書きます。「持たざる者」は四人の主人公がそれぞれ、絶望や後悔や諦念やもどかしさといった感情を抱えながら過ごしていきます。それぞれの主人公の物語を読んでみて感じたことを書いてみます。ネタバレありますのでご注意ください。それでは宜しくお願いします。

 

 

【修人】

 一人目の主人公修人。

 

 東日本大震災が起きた。福島の原発事故が起こり、放射能汚染の危険性が取りだたされた。彼は放射能汚染の被害に過剰に反応してしまうようになり、仕事と家庭の両方を失うのであった。

 


【どうしても気になること】

 時に人がそんなに気にしないことが滅茶苦茶気になることがあります。

 

「どうしてそんなこと気にするの?」

 

「どうして気にならないの?」

 

 人は色んな価値観を持つものだけど、その価値観がかけ離れすぎると、人間関係は崩壊してしまう。

 

 それが家族間で起こると取り返しのつかないことになります。そんな惨状を読むことになります。

 

 夫婦関係はちょっとした価値観の擦り合わせでさえ難しくて、お互いが納得いく形に持っていくのに苦労したり、どちらかが折れて我慢することで不和を溜めたりと、ちょっとした微調整でさえ骨の折れることなのです。

 

 それが自分では制御できない不安や心配といった心の変化が起こると、生活は一変してしまうのかもしれないです。

 

 読んでいて、人生何が起こるかわからない恐怖を感じました。

 

今目の前にある紙くずさえ自分の力では払いのける事が出来ないような、そんな無力感だった

(「持たざる者」より)

 

 どうすることのできない価値観の変化があると思う。今で言えば「新型コロナウイルス」で大なり小なり価値観が変わった人、沢山いるのではないでしょうか。

 


【千鶴】

 二人目の主人公千鶴。

 

 周りからの評価を気にして、自分の感情を押し殺して完璧な自分を演じていた。辛いことはあるけど、それなりに楽しさもあった。それが、子どもの死をきっかけに完璧な自分が崩壊していく話です。

 


【作り上げた自分は壊れやすい】

 僕たちは自分の人生そのものを作り上げるまではいかないにしても、多かれ少なかれ相手に合わせて自分のキャラクターを作っている節はあるかと思います。

 

 そういった相手に合わせて作り上げた自分でいる時は酷く疲れるし、壊れやすいものなのでしょう。反面、それは人間関係を円滑に保つことに大いに役立つ側面もあるのだけれども。

 

 そのいき過ぎた作り過ぎた自分像の崩壊を読むことになります。

 

 最低でも、家族や親友には自分の本質の部分を見せれるような関係を築いていきたいなと僕は思いました。

 

私は完璧に生きてきた。誠実な男と結婚し、可愛い息子をもうけ、石橋を叩きながら幸せに生きてきた。だからこそ、息子を失った後私には著しいコントロール不能感があった

(「持たざる者」より)

 

完璧主義の弊害と言えばいいでしょうか。

 


【エリナ】

  三人目の主人公エリナ。

 

 天真爛漫な性格で周りから良い意味で特別な存在となってしまい、思うままに楽しいことをして生きてきた。周りからは好きに思うように楽しく生きているように見えるけど、彼女自身は自分の本能の流れに逆らえずに苦しんでいた。

 


【本能のままに生き過ぎる事】

 僕の感性にはないものだけど、自分の感情に100%素直に生きている人にも、その人なりの悩みがあるんだなと思いました。

 

 本能のコンベヤに乗せられる虚無感であったり、他人と自分の感覚のズレであったり、楽しさの意味が分からなくなったりと、そういうこともあるんだなと読んでいて思いました。

 

確かに日本は楽しい。楽しい事が頂点に置かれ、楽しさを追求し、追求し尽くされた挙げ句楽しい事がつまらない事にすげ替わり、つまらない事が楽しい事にすげ替わる現象が起こるような、とにもかくにも楽しさが指標になり構成されたような国に見える

(「持たざる者」より)

 

 そういえば、逆転してつまらないことが楽しいことになったり、楽しいことがつまらないことになることってあるなと思いました。

 


【朱里】

 四人目の主人公朱里。

 

 心の中や気心知れた友人や旦那にはネガティブな事や毒を吐くけど、表面上は笑顔で振る舞っている主婦の話。イギリス駐在や帰国してからの親族間問題や子どもの事に対して彼女はどう対応するのか。

 


【日本人的な感覚なのかな】

 朱里さんは、嫌なことがあっても直球ではぶつけず変化球で対応したり、周りのことを考えて思っていることを言わなかったり、表面的には優しく振る舞っていても心の中では毒づいていたり、調和を保ちながらも堅牢な壁を築いています。

 

 朱里さんの心の中が四人の登場人物の中で日本人的な気質が強いと僕は読んでいて感じました。

 

 今の状況や自分の都合に合わせて、考え方や価値観や過去の記憶の感情を何度もすり替えたりしてどっちつかずに鬱々としている心理描写が個人的には一番共感するところが多くて引き込まれながら読んでいました。

 

いつの間にかイギリスでの記憶が美化されていたことに気づいて力が抜けていく

(「持たざる者」より)

 

 嫌だった記憶を今の状況との体裁を保つために楽しかった記憶へとすり替えたりすることって意外とやってることなのかなって気づかされた。あの時は大変だったけど、今振り返ってみると楽しかったなとか。

 

 

【まとめ】

 以上、金原ひとみ先生の小説「持たざる者」の感想でした。

 

 もしも、読んでない方がおられましたら、是非ご一読してみては如何でしょうか。

 

持たざる者 (集英社文庫)

持たざる者 (集英社文庫)