ランニング好きライトゲーマー虫虎の日記

ゲーム、ランニング、読書、昆虫、子育て、文章書き、オナ禁、映画、人間関係、音楽、僕が考えていることを書いている雑記ブログ

ダイエットに挑戦物語

「学校の準備できたの。もう出るわよ」

 

私は2階にいる息子に声をかけた。

 

「はーい」

 

元気の良い返事が聞こえてからランドセルを背負った男の子が下りてきた。私と息子は一緒に玄関を出て、鍵を閉めた。

 

朝は少し寒さを感じるようになった10月のある日。

 

「行ってきまーす」

 

「気をつけるのよ」

 

息子は学校へと向かっていった。私はその姿を見送ると、車に乗り込みスーパーへ向かった。スーパーの仕事は品出しとレジ打ち。午前中のみ勤務している。

 

朝のせわしない出発の準備の勢いのまま、パート仕事をして、お昼過ぎに帰宅する。忙しい時を終えて、一人家に帰るとやっと落ち着くことができる。一人になるとようやく自分の事に思考が回り出してくるものだ。

 

私はふと思い至ったように立ちあがり、服を脱いで体重計に乗ってみる。

 

(なかなか減らないなぁ………)

 

最近、お腹が少し出てきている。何とかしたいと思いながらも忙しさを言い訳に私は何もしていなかった。

 

(走ってみようかな)

 

急にそんな思いが頭の中に現れた。


「よし」

 

私は衣装ケースの中からジャージを引っ張り出して着替えた。

 

(えーと、確かに運動靴もあったかな)

 

私は玄関へ行き収納スペースの普段使わない靴達を探してみた。

 

「あったあった」

 

いつ買ったのかも忘れてしまった薄汚れた運動靴が見つかった。

 

「よし、行ってみよう」

 

私は近所を軽く走ってみることにした。

 

「はぁはぁ」

 

(あれ、全然走れない)

 

毎日家事と育児に奔走して、パートでは立ち仕事をこなしている私は体力は結構あるだろうと高を括っていたけど、そんな予想は裏切られて全然走れなかった。1キロも走らない内に息は絶え絶えになってしまった。

 

それでも根性出して走ってみた。けど、限界はすぐに訪れた。

 

「はぁはぁ、もう無理………」

 

私は走るのを諦めて歩いて家に帰った。シャワーを浴びて、お気に入りのアールグレイティーを淹れて一休みする。

 

(ああ、パートの疲労とは違う充実感のある疲労だわ)

 

いつもの紅茶の時間がいつもより幸せな一時になった。

 

 


パートを終えてからのジョギングは3日目になった。少しだけ慣れたのか息の上がりが遅くなったように感じる。でも、まだまだ長くは走れない。

 

「はぁはぁ………秋だぁ」

 

私は呟いた。辺りで銀杏の木の葉の黄色が美しかった。いつも車で通っている道だけど、車のミラー越しに素早く通りすぎてしまう風景と走りながら目視する風景とでは全く違った色鮮やかな世界に見えた。

 

(走るの楽しいかも)

 

私にそんな思考が浮かんだ時、急に足が痛くなった。

 

「痛ったい」

 

私は急に立ち止まってしまった。踵が痛い。今日は止めにしようと歩いて家に向かった。

 

次の日になっても踵は痛かった。踵の痛みを我慢しながら私はパートに向かった。品出ししていると近くに社員の本島さんが通りかかった。

 

(あっそういえば、本島さんってランニングが趣味なんだったっけ?)

 

私はあまり面識はないのだけれども話しかけてみた。

 

「あの、おはようございます」

 

「おはようございます」

 

本島さんは丁寧にお辞儀してくれた。

 

「あの、本島さんってランニングされてましたか?」

 

「ああ、はい、それが何か?」

 

真面目なおじさんは不思議そうに聞いた。

 

「あの、私、3日程前からランニングを始めてみたのですが、踵が痛くなってしまったんですよ」

 

「ほう」

 

「それで何が悪かったのかなというか、どうしたら踵を痛めず走れるのかを本島さんに聞いてみたくなりまして」

 

「ああ、そういうこと」

 

真面目なおじさんは納得した様子だった。

 

「まあ、いきなり走ったら痛めますよ」

 

「えっ」

 

「歩く時ってどちらかの足の裏が地面についているじゃないですか。でも、走ってる時って両方の足の裏が地面から離れた状態で片方の足が地面に着地するんですよ。それって、歩く時の倍以上の衝撃が足の裏にかかってくるということなんです。だから、いきなり走り始めたら、足の裏への負荷がかなりかかってしまうんです」

 

「へぇそうなんですね」

 

私は納得した。そういわれてみるとそうだ。

 

「だから、足への衝撃があることを意識してまずはゆっくり走ったり、時には歩いたりして長い距離を走るようにした方がいいですよ」

 

「はい」

 

「あと、シューズは何を履いてますか?」

 

「あっえっと家にあった運動靴を履いてます」

 

「どんな運動靴を履いているのか分かりませんが、それも踵への負荷の原因になっているかもしれないです」

 

「へぇそうなんですね」

 

「やっぱりスポーツ用品店で店員さんに相談してなるべく足に負担のかからないシューズを探してみるのがいいと思いますよ」

 

「へぇそうですか、凄く参考になりました、ありがとうございます」

 

私は深々とお辞儀した。

 

「是非ランニング続けてくださいね」

 

本島さんは少し嬉しそうな表情をみせて去っていった。

 

(私のランニングシューズかぁ)

 

私はなんだか新しい趣味に胸が踊っていた。


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