【前置き】
どうも、虫虎です。今回は上橋菜穂子先生の小説「鹿の王 生き残った者」(上巻)の感想を書きます。ネタバレありますので、お気をつけください。それでは宜しくお願いします。
【あらすじ】
東乎瑠帝国に攻め込まれたアカファ王国は、帝国の支配下に成り下がるにしても、少しでもいい条件を得るために政治的負け戦を敢行する。その戦の大将を任されたヴァンはそれを自分の死に場所であると悟り、戦に奔走する。しかし、辛くもヴァンは生き残り、奴隷になってしまう。そのヴァンが奴隷生活を送る岩塩鉱に疫病が蔓延した。鉱員が皆死んだ中でヴァンはまたしても生き残る。ヴァンはそこでもう一人の生き残りである幼子を見つけ、その子と岩塩鉱から逃亡するのであった。
一方、その岩塩鉱にて蔓延した疫病から人々を救うために天才的な医術師であるホッサルが奮闘するのであった。
【複雑なのに分かりやすい】
帝国が王国を支配しているけど、高度な学術を有する古くからある聖領が力を持つという状況があったり、帝国の政策として帝国移住民と王国遊牧民が交わることになったり、その中で疫病が流行り帝国の人ばかりが死んでしまったりする。そんな僕が文章でまとめてみても、訳が分からない世界観なんだけど、上橋菜穂子先生の構成力や文才が凄すぎて頭の中に無理なくちゃんと内容が入ってきて分かりやすい。そして、面白いです。
「東乎瑠帝国に征服された後も、まるで地下水脈のように脈々と息づき、地面の薄皮を一枚をめくれば、その下に、地上には見えているものとは全く別の、古い王国群の絆が、いまも張り巡らされているというわけか」
(「鹿の王 生き残った者」より)
【病について考えさせられる】
同じ病でも罹患する人としない人がいる。治る人と治らない人がいる。それは誰が決めるわけでもない。悪いことをせずに真面目に生きているから病気にかからない訳ではないし、悪いことをしているから病気にかかるという訳でもない。産まれてすぐに病に冒される子もいれば元気に育つ子もいる。本書は病は人を選ばない恐ろしさや命の尊さを見つめさせてくれます。
避けがたい運命のような病もあるのだけど、自分が罹患しないように気をつけることでなんとかなることも多いと思います。今はコロナウイルスが流行しているけど、マスクをして手洗いうがいに外出自粛をすることで罹患の可能性は下げることができます。さらに生活習慣病などは自分の食生活や運動習慣、睡眠時間の確保などの工夫で防ぎやすいです。
天命のような本当にどうしたらいいのかも分からない病は仕方ないのかもしれないけど、自分の努力でなんとかなる病にはかからないようにしたいなと思いました。
「残酷な罪深い人々でさえ、天寿を全うして幸せに逝くこともある。生と死は、人の思惑の中で語れるようなものではない」
(「鹿の王 生き残った者」より)
【薬のついての勉強になった】
本書を読んでいて薬について書かれているところが勉強になりました。薬と漢字一字で表現してもその種類は沢山ある。その薬に住み分けがあることを知れたのが良かったです。
病素を弱めて作る「弱毒薬」、病素を殺せる素材から作る「抗病素薬」、病素に対抗しようという特殊な働きから作る「血漿体薬」。
「病素を見つけたられたら、その病素を弱めるか、殺すかして作る〈弱毒薬〉を作れる~中略~それを抑えたり殺したりする薬効がある素材を探せる。つまり、〈抗病素薬〉を作れる~中略~病素に対抗しようとして特殊なものが作られている可能性があるの。~中略~病素に抗する力をもつ〈血漿体薬〉を作る」
そうなんだ。凄く勉強になります。
【下巻が気になる】
壮大な物語は下巻へ続きます。
上巻では交わらなかったヴァンとホッサル。二人の主人公はいつか交わる時が来るのか。
物語の結末は何処に落ち着くのか。
僕のお気に入りのマコウカンさんはどんな活躍をするのか。
下巻を読むのが楽しみです。
【まとめ】
以上、「鹿の王 生き残った者」の感想でした。
ここまで読んでくださってありがとうございました。