ランニング好きライトゲーマー虫虎(小説家志望)の日記

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小説「鹿の王 還って行く者」感想

【前置き】

どうも、虫虎です。今回は上橋菜穂子先生の「鹿の王」の下巻である「鹿の王 還って行く者」の感想を書いていきます。ネタバレありますので、ご注意ください。宜しくお願いします。

鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

 


【物語の行く末が気になる】

黒狼熱の原因は何なのか、罹患する者としない者がいるのは何故か、広がっていってしまうのか、ヴァンとホッサルはどう関わるのか、火馬の民の怨念は何処へ向かうのか、そんな物語がどのような結末を迎えるのかを読み進めていくのが滅茶苦茶楽しい下巻でした。

 


【人も国も小さな命の集合体】

人の中には小さな命が沢山あり、例えば病素と戦うなどして自らの身体を生かす。国の中には人がいて、国という形が成り立っている。

 

人と国には似ているところがあります。

 

自分の心があずかり知らない体内で色んな命が生きたり死んだりしながら生命を維持しています。国では王様があずかり知らないところで色んな人が自分の考えを持ち行動しながら国が存続しています。

 

国という大きな枠を使って人の身体のことを例えているのが、とてもしっくりと分かりやすく心に入ってきて読んでいて感嘆しました。

「身体も国も、ひとかたまりの何かであるような気がするが、実はそうではないだろう。雑多な命が寄り集まり、それぞれの命を生きながら、いつしか渾然一体となって、ひとつの大きな命をつないでいるだけなのだ」

(「鹿の王 還って行く者」より)

 


【黒狼熱の謎が解ける快感】

上巻を読むと気になるのが黒狼熱のことですね。

 

この病素が東乎瑠帝国の移住民政策とアカファ辺境の民との生活の中で複雑に絡み合いながら発生した原因が少しずつ紐解かれていきます。それが凄く快感で夢中になって読み進めてました。

「黒狼熱に耐性がある人に共通しているのは、ダニにたかられても病まない獣の乳を飲んで育っていること。その獣は地衣類を食べているということだ。」

(「鹿の王 還って行く者」より)

 


【情景描写が魅力的】

上巻でのオキの民の生活であったり、下巻からの飛鹿や火馬の生態であったり、ヴァンとサエの冒険時などの情景描写が魅力的で惚れ惚れしてしまいました。

 

脳内に飛鹿や火馬の躍動や自然豊かな風景が再生されて、心地好い気分になれますね。

「下生えを飛び越え、木々を縫い、鬱蒼と生い茂る灌木の藪を軽々と飛び越えて行く」

(「鹿の王 還って行く者」より)

 


【ユナちゃんが可愛い】

大人たちは眉根を寄せながらキンマの犬の事件に関わっていくという世界観の中にユナのあどけない描写が描かれるとなんだかほっこりします。この世界観にいると余計にユナちゃんの明るさが通常の二倍位に感じますね。無邪気な言葉に癒しを感じます。

 


【家族の暖かさを感じる】

そして、最後の場面であるけど、ユナとの深い絆であったり、トマ達に慕われていたり、サエの好意を感じつつあるヴァンさん。

 

独角として全てを失ってただ天命を全うするだけであったヴァンさんに身内ができた。

 

ゼロから深く愛情や敬愛に満ちたものが新たに生まれたことに涙しながら最後を読みきりました。

「唇をふるわせ、声も出せずにヴァンとユナを見つめているその顔に、やがて、激しい歓喜の色が浮かぶのを見たとき、ヴァンはなにかで胸を強くえぐられたような気がした。この人は身内だ。もはや、身内なのだ」

(「鹿の王 還って行く者」より)

 


【まとめ】

とても面白かった「鹿の王」の感想でした。

 

ここまで読んでくださってありがとうございました。