ランニング好きライトゲーマー虫虎(小説家志望)の日記

ゲーム、ランニング、文章書き、読書、昆虫、子育て、オナ禁、映画、人間関係、音楽、僕が考えていることなどを書いている雑記ブログ

小説「手のひらの京」感想

【前置き】

どうも、虫虎です。今回は、綿矢りさ先生著「手のひらの京」を読みましたので感想を書きます。ネタバレありますが、よろしければお付き合いください。宜しくお願いします。

 

 

【あらすじ】

京都に住む三姉妹のお話。

 

長女の綾香は、同世代が次々と結婚していく中で焦りを感じている。次女の羽依は、入社した大企業での恋愛沙汰による「いけず」撃退に忙しい。三女の凛は、閉塞感のある京都から一度離れたいと考えるも両親に猛反対され悩んている。

 

京都を舞台にそんな三姉妹の物語が紡がれていく。

 

【京都へ行きたくなる小説】

京都の町並みや祇園祭大文字焼き、紅葉、神社、地形などの描写が魅惑的で京都へ行きたくなりました。

 

色んな角度から京都を読み取ることができて楽しく思いました。

 

「山は複雑な色合いで紅葉の錦を織り、ふと遠くを眺めた人間にだけ、美しさを披露していた」

(「手のひらの京」より)

 

【綾香】

僕は、三姉妹の中では綾香に一番親近感を覚えました。一人で悶々と他者との距離感を図るところや結婚への焦燥を感じてるところに共感しました。

 

個人的に応援したくなる登場人物だったので、宮尾さんと上手くいきそうで、ほっと胸を撫で下ろしました。

 

それから、綾香の話に出てきた祇園祭の描写が魅力的で夜の祭りに久しぶりに行きたくなりました。

 

「すでに鴨川での納涼の習慣があったという江戸時代にタイムスリップしてもおかしくない。目もくらむほどの長い年月、夏になると必ず繰り返されてきた風景。それでも今年の夏は、今年の祇園祭は、一度きりだ」

(「手のひらの京」より)

 

【羽依】

恋愛好きの女子。京都でとは限らず目立つことしてる人は叩かれやすいですよね。

 

ただ、違うのは京都で目立つと「いけず」の対象となるということです。京都の伝統芸能と表現される「いけず」が嫌味ったらしく書かれています。それを撃退する羽依ちゃんの行動力と度胸に胸がスカッとしました。

 

大勢からの「いけず」はかなり精神的にしんどいものだよなと感じました。

 

「普段おっとりのほほんとして響く京都弁を、地獄の井戸の底から這い上がってきた蛇のようにあやつり、相手にまとわりつかせて窒息させる呪術もお手のものだ」

(「手のひらの京」より)

 

【凛】

京都はやはり何かしらの特別な力が働いてるのかなと凛の話を読んでて思いました。

 

京都は日本国内ではあるんだけど、どこか異質な土地柄。それには深く根付いている古都という歴史や伝統に起因するものでしょうか。

 

僕は京都へは旅行で数回行ったくらいなので、是非再び訪れてみてその空気感を味わってみたいと思いました。

 

「確かに京都は、よく言えば守られてるし、悪く言えば囲まれてる土地や」

(「手のひらの京」より)

 

しかし、思うのは故郷というのは場所ではなくてそこで暮らしてる人達、そのものであるようにも思えました。場所はどこでもよくて、そこでずっと一緒にいた家族がいるかどうかが大事だよなって改めて感じました。

 

そう思った一文がこちらです。

 

「京都のなかにいればどこにいても見られる、四方を囲む盆地の青々とした山の景色が恋しくはなるが、昨日の電話を切った後に感じた、家族の揃う居間を想う気持ちの強さとは比べものにならない」

(「手のひらの京」より)

 

【まとめ】

以上、綿矢りさ先生の「手のひらの京」の感想でした。