【前置き】
どうも、虫虎です。今回は、又吉直樹先生著の小説「劇場」を読みましたので感想を書きます。ネタバレありますが、よろしければお付き合いください。宜しくお願いします。
【あらすじ】
学生時代に演劇に魅了された永田は上京して脚本家として活動し始める。しかし、演劇の世界は甘くはなく、劇場を借りるのも、役者を揃えるのも、資金がいる。演劇を続けることで永田は生活費もままならなくボロボロの状態になっていた。そんなとき、偶然にも沙希に出会った。
【切ない恋愛小説】
お互いに好きという気持ちを残したまま、変わらない状況と変わる価値観に翻弄され、恋の終着駅に辿り着きます。辿り着いた駅はとても切なくて胸を締めつけられるところでした。
外からの風のない二人だけの世界というのは安心な場所であるのだけど、歪んだ認知を作り出してしまうこともあるのだと切なくなりました。
「沙希の狂ったような優しさが、相手の求めていることをすべて受け入れてしまうという習慣につながり、それは僕の我儘な要請により、僕の言うことだけに適応していたはずだが、過度のストレスからかその範囲が広がったのかほかの人にも適応しはじめてしまったのだと思う」
(「劇場」より)
【沙希のような人はいない】
小説はフィクションであるのだけれども、沙希ちゃんのような従順で明るい、まるで天使のような女の子は現実を探してもなかなかいないでしょう。
小説内では、従順故に少しずつ精神を崩していく様子が痛々しく可哀想に感じました。
沙希にとっても永くんは特別な存在だったのかもしれないけど、出会わなければよかったとさえ思いました。
「沙希は東京というより、沙希にとっての東京の大部分を占めていた僕から逃れたかったのだと思う」
(「劇場」より)
【胸糞悪い永田さん】
沙希の優しさに甘えきった永田さんの横柄な態度に悲しくなりながら読んでました。
やっぱり、女性に対して男は現実ではもっと誠実に守ってやるくらいの気概でないと駄目だなと改めて思いました。
結果的に、永田さんは青山さんにメスを入れてもらって良かったと僕は読んでて思いました。
時は既に遅かった。いや、ここまで崩壊しないとわからない関係性だったのでしょう。
「彼女に寄生して暮らす後ろめたさが知らないうちに大きくなっていたのだろうか」
(「劇場」より)
【夢と恋の両立は難しい】
「劇場」を読んで改めて夢と恋の両立は難しいと感じました。
甘やかされているとできないのかもしれないけど、その二つを手に入れたいなら、もっと時間を有効に利用しなければならないですね。
【互いに変わり続ける必要性】
お互いのことが好きなら相手に合わせて変わってく必要もあるのかなと思います。その時々に合うダンスを踊り続けていくことが大事になるかと思います。
好きじゃないと感じたら、そのダンスをやめればいい。ただ、好きって気持ちがあるなら、変わることも必要なことだと思えました。
【まとめ】
胸がしめつけられる恋愛小説でした。二人だけの空間は安心。だけど、何かが狂い始めてても分からないものなのかもしれないですね。
「でも僕は沙希が笑っているこの時間が永遠に続いて欲しいと願った」
(「劇場」より)