【前置き】
どうも、虫虎です。エミリー・ロッダ先生のデルトラクエストシリーズの第1部の1巻〜8巻まで読みましたので、感想を書きます。ネタバレありますが、よろしければお付き合いください。宜しくお願いします。
【沈黙の森】
【あらすじ】
デルトラ王国のお話。影の大王の狡猾な侵略により、7つの宝石が奪われた。デルトラ王国は、荒廃の地と化す。少年リーフはデルトラ王国を救うべく、7つの宝石を探す冒険へと足を踏み出すのであった。
【冒険ファンタジーの始まり】
冒険ファンタジーですね。仲間を集めて冒険ですね。子ども向け小説だから読みやすい。だけれども、内容は深いです。
第1巻「沈黙の森」は概要的内容が多く、時の流れが速かったですね。
これからの展開が楽しみですね。
【嘆きの湖】
【あらすじ】
少年リーフは、デルトラ城の元衛兵であるバルダと森で暮らしていたジャスミンと共に旅を始めることとなった。果たして、2つ目の宝石を見つけることはできるのだろうか。
【勝負は時に殘酷である】
長い年月、人々を苦しめて、恐れられてきた強大な魔力を秘めている魔女テーガン。
ネタバレですが、リーフ、バルダ、ジャスミンでは勝てそうにない魔女テーガンがカラスにクリーに隙をつかれて瞬殺されます。
勝負は時に残酷、一瞬の油断が死を招いてしまいますね。
【ネズミの街】
【あらすじ】
リーフ、バルダ、ジャスミンは2つの宝石を手に入れた。旅はまだまだ続いていく。
次に訪れた街「チュルナイ」は異様だった。恐ろしささえ感じてしまうほどに磨き込まれた部屋、食べ物を床に落としただけで重罪になるというような価値観、そして、何故か小動物を大袈裟な程に忌み嫌っている街の人々。
この街のからくりはなんだろうか。
【伏線回収が凄い】
あーなるほど。あの異様なチュルナイの街の成り立ちはそういうことだったのか。面白いなーって感想をいだきました。
影の大王の手下となったネズミ捕りネズヌクたちはネズミをわざと繁殖させて大蛇の餌にしていた。そして、増殖したネズミは人々を襲い始める。全身を布で覆っておかないと噛まれてしまうし、食べ物には蓋をしてないと近寄ってくる。こぼしでもしたら一貫の終わりだ。
そんな怯えながら暮らしていた人々が逃げ出して新たに作った街「チュルナイ」。
だから、あんな変な慣習や国民性を持ってたんだ。なるほどねー。
【洗脳の恐ろしさ】
傍から見たら絶対におかしいのだけれども、洗脳された人々はそれが普通であると思いこんでいる。
それって凄く怖いことだと感じました。自分の中にも凝り固まった可笑しな価値観があるかもしれないですね。柔軟な心で見極めたいものです。
チュルナイの人々の異様な普通、本人たちにとっては当たり前を疑ってみて打ち破ることの難しさを読んでいて感じました。
「人って、生まれたときから教えこまれると、おろかな規則を疑いもせず、守ってしまうものなのね」
(「ネズミの街」より)
「でも、いつだって、自分の頭で考えることがたいせつよ。そうすれば、おろかな慣習だって断ち切ることもできる」
(「ネズミの街」より)
【うごめく砂】
【あらすじ】
4つ目の宝石を探すべく旅を続けるリーフ、バルダ、ジャスミン。前回、ネズミの大群の追い剥ぎに合い、持ち物は何もない。
困り果てつつも、進むしか道はない。そんな彼らの元に、おいしい話が聞こえてきた。
リスメアの街で大会に出て勝つことができれば、賞金を貰えるというのだ。まずは、資金を調達しなければと、意気込む彼らに待ち受ける運命とは如何に。
【お金の話】
RPGゲームだったら、敵を倒すと何故かお金が手に入ります。けど、物語ではそうはいかず、リーフたちは金欠状態です。
そこで、リーフたちは悪徳ギャンブル業者と絡む。悪徳ギャンブルのように人を騙して稼ごうとする人も、楽してギャンブルで稼ごうとする人も、ろくな事にはならない。
そんなメッセージがあって良かったなと読んでいて感じました。
【闘技場バトルという胸熱展開】
第4巻では、闘技場でのバトルがあります。今までの冒険でバルダは凄く強いのは読み取れたけど、リーフとジャスミンもかなり強いなーって感じでした。伊達に死線を越えてませんね。
腕自慢の一般市民などよりも十分に強いんだって展開が僕の心を踊らせました。
「リーフは子ども時代、デルの街の危険な通りを、むだにかけずりまわっていたわけではなかった。おかげで、バルダがマザー・ブライトリーに言ったとおり、スピードにかけてはだれにも負けない。しかも、機転がきき、自分よりも何倍も大きい敵でも、さっとやりすごせる。まだ少年だが、父をたすけて鍛冶場で働いてきたおかげで、おとな並の体力と筋肉ももっている」
(「うごめく砂」より)
【うごめく砂の謎】
エミリー・ロッダ先生の物語展開は面白いなと毎回感嘆してしまいます。
砂をうごめかす正体、金属類だけ奪われる理由、宝石を手に入れるのにあのときの老婆の台詞や木彫りの小物が必要になるとは………。
読んでいて色んな点が結びつく感覚が爽快ですね。
まさか砂をうごめかすのが蜂だったとは、その蜂の幼虫のために朽ち果てない金属を集めて部屋にしていたとは、木彫りの小物で宝石を回収できるとはね。(ネタバレ)
いやー、面白いですね。
【恐怖の山】
【あらすじ】
リーフ達は5つ目の宝石を探すべく砂漠の上を延々と歩いていた。そんなとき、彼らの目の前にオアシスが現れた。急いでいき、水をたらふく飲む。しかし、このオアシスは何かがおかしい。木々はどれも全く同じ形をしている上に生命が全く感じられないのだ。不思議に思いつつも、そこで一夜を明かすことにしたリーフ達はこの場所が幻の生き物「キン」達の棲家だということを知る。幻の生き物「キン」がここに住まう理由は何なのだろうか。
【魅惑的な生き物の多い第5巻】
第5巻「恐怖の山」には魅惑的な生き物が多かったです。
幻の空飛ぶカンガルー(?)の「キン」、影の王国から流れてきた戦う事にしか興味を示さない怪物「ブラール」、極悪非道の毒蛙「ゲリック」など、なんとまあ、個性豊かな生き物達がファンタジー度を高めてくれます。
子どもの頃に夢見るようなわくわくした世界観に浸れます。
【「ゲリック」が全てを狂わす】
毒蛙「ゲリック」に小人族は奴隷にされる。その憂さが溜まったのか、小人族はゲリックの毒を矢に塗り込んで「キン」を殺す。山を追われることとなった「キン」達はオアシスへ行く。「キン」が山を離れることで餌であるブーロンの木が生い茂りだして歩くこともままならなくなった。
物語の繋がりが凄いなーって毎回感嘆してしまいますね。やっぱり、エミリー・ロッダ先生の作る話は面白いですね。
【魔物の洞窟】
【あらすじ】
リーフたちは6つ目の宝石を探すべく旅を続ける。次第に影の王国からの追跡が強くなっていくのを感じながら………。6つ目の宝石が隠された魔境は「魔物の洞窟」。そこには一体どんな試練が待ち受けているのだろうか。
【伏線の6巻】
ジョーカーの真の目的とは何か。
デインは、何故デルの姉妹都市であるトーラという街へ行きたがるのか。
終盤へかけて盛り上がりそうな伏線がありましたね。
【旅の仲間】
オルなどの影の王国の者たちは、少年と大人と男と野育ちの少女と黒いカラスの一行を探している。だから、ジャスミンは自分達が狙われないように離れて行動することにした。そして、離れてみて分かることが沢山あった。ジャスミンの感応能力に助けられていたこと、彼女がいないことへの不安、彼らには強い絆が出来上がっていたということ。旅の仲間の強い絆って素敵だなって読んでいて思いました。
「もし、生きて彼女に再会できたら、これからはぜったい、いっしょに旅をするようにしよう。慎重なのは、いいことだ。だが、世のなかには、それ以上にたいせつなことがある」
(「魔物の洞窟」より)
【グルーが個人的に好き】
表紙のグルーが個人的に好きです。物語の終盤に彼らを追い詰める様子を読むのも楽しかったです。洞窟にこだまする音に反応してゆっくりと獲物を追い詰めるという生物の食欲という本能的恐ろしさがいいですねー。堪りませんでした。
【いましめの谷】
【あらすじ】
盗賊に囚われてしまったデインに気をかけつつも、リーフ、バルダ、ジャスミンは最後の宝石ダイヤモンドを求めて「いましめの谷」を目指す。
苦難の旅路の中、彼らはデルの姉妹都市であるトーラに行き着いた。
しかし、エンドン国王の子どもが匿われているかもしれない魔法都市トーラは人っ子一人いないもぬけの殻だった。
【パズルが楽しい】
「いましめの谷」に辿り着くと謎の老人からゲームを仕掛けられます。その謎解きゲームが面白かったですね。
小説読みながら謎解きパズルゲームするという斬新な感覚を味わうことができました。
ファンタジー感が強まった箇所でした。
「トーラは、一つの大理石の山を、魔力でくりぬいて作られた街だ〜全体がひとつづきで、割れ目もつぎ目もない。完璧だ」
(「いましめの谷」より)
【風化していく伝承への憂い】
昔々、デルの街と友好関係を結び、守っていくと誓いを立てた街トーラ。
しかし、時が経つにつれ、そこに住まう人々の誓いは薄れていく。
デルの街が危機に迫られた時、忘れ去られた誓いをすんなりと破ってしまったトーラの人々は滅びた。
何とも悠久の歴史を感じる物語に心が踊りました。
【最終巻への謎バトン】
色んな謎を残したまま、最終巻へバトンが渡されます。
デインは何者なのか、ジョーカーは敵か味方か、本物のエンドン国王は生きているのか。
最終巻が楽しみですね。
【帰還】
【あらすじ】
遂に7つの宝石を集めたリーフ、バルダ、ジャスミン。後は、エンドン国王の子どもを探し出し、ベルトをつけてもらえば影の大王を退けることができる。しかし、エンドン国王の子どもは一体何処にいるのか。影の大王の魔の手が迫りくる中、見つけ出すことはできるのか。
【7つの部族を集結させる】
7つの部族を集結させて王の子を探すって展開が熱いですね。
今までの冒険で出会った協力者達が集結して影の大王に立ち向かう。最終回に相応しい壮大な展開を読んでるとわくわくしっぱしでしたね。
「わたしたちは、おなじこころざしをもつ仲間ですよ。おたがいの才能と経験は、わかちあわなければ。いまこそ信頼の時、力を合わせる時ではありませんか」
(「帰還」より)
【何回も騙された】
以下、物語の核心部分のネタバレします。お気をつけください。
王の子孫は死んだのか、いや、デインなのか、いや、ジャスミンなのか、いや………っていう怒涛の展開に引き込まれて一気読みしました。
そして、デルトラベルトの力の発動条件も凝ってて感嘆しました。
作りに作り込まれた物語にとても楽しませてもらいました。
エミリー・ロッダ先生は素晴らしいストーリーテラーだなぁって改めて感動しました。
「それこそ…わたしたちにふさわしいと思わないか、リーフ。デルトラをとりもどすこの戦いは、最初から最後まで、ひとすじなわではいかないことだらけだった。わたしはむかしから、そういう物語が大好きだったよ。なぜなら…そういう物語には…幸福な結末がつきものだ…わたしたちの…この…物語のように」
(「帰還」より)
【まとめ】
最高に楽しい物語を楽しむことができました。ありがとうございました。