【前置き】
どうも、虫虎です。今回は小路幸也先生の小説である「旅者の歌シリーズ」の感想を書いていきます。文庫版は「旅者の歌 始まりの地」「旅者の歌 魂の地より」の2冊からになっています。例の如くネタバレありますので、ご注意下さい。それでは宜しくお願いします。
【あらすじ】
「シィフル」というとても平和な地で国の賢者候補として日々学びに努めていた14歳の少年ニィマールがいた。ニィマールは、幼馴染みである許嫁ジェイラ、優しく頼りがいのある兄トゥール、優しく聡明な姉ティアラ達と平和に毎日を過ごしていた。
そんな平和な「シィフル」の地には何故か不思議な出来事が起こる。生まれてから7年目毎の年の3回、つまり、7歳、14歳、21歳の時に「試しの日」が訪れる。「試しの日」には、皆が皆ではないが、人から獣に変身してしまう者が現れるのだ。獣になってしまった者は、人ととして過ごしてきた記憶を無くしてしまう。
ニィマールとジェイラの14歳の誕生日、トゥールとティアラの21歳の誕生日という、「試しの日」に物語は動き出す。許嫁のジェイラが猫に、兄のトゥールが馬に、姉のティアラが鷹に変身してしまったのだ。しかも、人の意識を持っていたのだ。それを「離者」というそうだ。
ニィマールは、獣に変わってしまった許嫁、兄、姉を元の人に戻す為に「シィフル」の地を旅立つことを決意する。見たことのない世界を冒険するニィマール達に待ち受けるものは何か。彼らを人に戻す術はあるのか。今、壮大な冒険が始まろうとしている。
「広がるのは風に流れるように草がなびく草原、そして開墾された様々な色合いの畑。眼に鮮やかな森の緑、ゆったりと流れる大河の清らかな水。そよ風に暖かな気温、四季を通じて穏やかな気候に柔らかな色合いの町並み。遥か彼方には周りのをぐるりと取り囲む雪に覆われた山脈」
(「旅者の歌 始まりの地」より)
平和で素敵な国ですね。
【初めてを体験する冒険】
平和な始まりの地からまだ見ぬ世界へ旅立つ展開が心踊らされますね。自分たちと少し似ている部分のあるシィフルの人が初めての世界を旅して回り、色んな土地、風習、民族、種族、敵対する者に触れていきます。彼らの初めての体験を本書を通して感じて共感していけるのが楽しかったですね。
あとは、物語を語る語り部の存在が共感に一役を担っていたと感じました。冒険者達の経験をいい具合に客観的に伝えてくれるので、読み取りやすくなっていました。読者と登場人物の程良い距離感が読みやすさを倍増させていたのかなと僕は思いました。語り部は小路幸也先生ではないけど、先生に語られてる感じがしますね。
「魂を持たない野獣、魔獣。生きるためにあなたたちを襲う蟲、見た事もない蠢く植物。およそこれまでの地にはいない数々の敵が、あなたたちの行く手を阻むでしょう」
(「旅者の歌 魂の地より」より)
冒険心を擽ってくれますね。
【旅の仲間の能力値が高い】
旅の仲間達は皆、個性的な能力を発揮して旅を進めていきます。旅の中で幾度となく訪れる困難を能力値の高い彼らが乗り越えていく姿に魅せられます。登場人物達の巧みな活躍を読み取っていくのが本書の魅力であるかと僕は感じました。
【平和な地の者が見る争いの地】
冒険をする「シィフル」の人たちは、争いとは程遠いところで暮らしていました。そういう人達の視点になって、争いがある地を見ること、実際に闘いを行うことで、争いの醜さを感じることになります。
争う理由は分かるけど、争うことの醜悪さはやっぱり嫌なものだなーと思わされますね。人が平和に暮らせるのが1番でありますね。
「でも、リョシャ。そうやって争いを望むのは王だけです。王とそれによって富を得るものだけ。国の富とはつまり作物。自動する機械がある国なら造られた機械。そういうものを造る農民や職人たちは富を得ることは少ないの。むしろ彼らは戦いの、争いの犠牲者になっていくんですよ」
(「旅者の歌 魂の地より」より)
戦争とはそういうものかもしれないですね。
【続編が読みたい】
物語は謎を残したまま終わりを迎えます。獅子であるスィールとルーラは何故王と王妃の魂を持ったのか。ドュランドセットルン達、精霊は何故この世界へ突如として現れたのか。神殿に横たわっていた2人の老人は誰なのか。神とは何なのか。魂とは何なのか。
「旅者の歌シリーズ」は多くの謎や問いを残しています。
調べてみると、どうやら打ち切りになってしまったようですね。続き読みたいなー。
「魂とは何かを探す旅。神とは何かを探す旅。それは、神と魂を追い求める旅。」
(「旅者の歌 魂の地より」より)
続きを~。
【まとめ】
王道RPG物語を小路幸也先生風に味付けしてみるとこうなった。そんな物語でしょうか。リョシャ達との長い長い旅路を追っていくのは興味深くて面白いですね。