【前置き】
どうも、虫虎です。今回は、宮部みゆき先生の小説「ICO~霧の城~」の魅力に迫ってみようかと思います。宮部みゆき先生がPS2のゲーム「ICO」に触発されて書き下ろした作品です。二次創作でありながら、ゲーム「ICO」から凄く精巧で濃密で重厚な物語を紡ぎだしています。凄いお方です。ネタバレありますが、宜しくお願いします。
【あらすじ】
いつだかわからない時代の、どこだかわからない場所でのお話。ある小さな村には稀に角の生えた子どもが生まれる。その子どもは村の掟により、「霧の城」へ生け贄に捧げなければならない。霧の城とはなんなのか。何故生け贄を必要とするのか。新たな生贄に選ばれた少年イコのお話。
【ダンジョンを冒険してる臨場感が素敵】
宮部みゆき先生の文章力によって、ゲームの世界の「ダンジョン」を冒険している時の面白味を小説ならではの文章感で楽しむことができます。読んでいて、「ゲームのダンジョン世界を文章でおこすとこんな感じなるだ」っていう感覚に感銘を受けてしまいました。
後は、ラスボスに当たる女王の存在を記す文章も凄く恐ろしさが伝わってきて好きです。
女王の気配だ。冷え冷えとした闇の結晶。歩き回る暗黒の息づかい
(「ICO~霧の城~」より)
【圧巻の霧の城の情景描写】
個人的に凄くおすすめの読みどころとして、「霧の城」の情景描写を挙げたいです。読んでいて、思わず1度本から目を離して「あー凄いなー」と感動してしまいました。
「褪せた土煉瓦色の巨大な城。切り出したままの石を積み上げたような荒々しい造形が、蒼水晶色の空を切り取って、どっしりと視界を占めている。左右に長々と伸びる外堀は、そこだけ唯一優美な曲線を描く石の土台柱に支えられ、寄せる並みが足元を洗うのにまかせている。断崖絶壁に面していながら、いささかな華奢な趣もない。それはあたかも、かつてはこの断崖の一部だった巨大な岩壁を彫り抜いて造りあげられたものであるかのようにみえた。あるいは自然の気まぐれな造形力が、たまさか、この場に人の造り得る城の形に似たものを彫りあげてしまったのだというかのようにも見えた。これこそが《霧の城》だった。」
(「ICO~霧の城~」より)
もう凄いですね。
【最後のシーンでの解放感が好き】
読み進めていくと、純粋で優しくて一生懸命なイコと過去が明らかになってゆくヨルダのことがどんどん好きになっていきます。心から愛着が沸いて応援したくなります。
そして、その2人が霧の城から解放された時の場面、異世界から現実世界に戻ってきた解放感のような感覚を僕は感じました。爽快な読後が待っていました。
【まとめ】
機知に富んだ素晴らしい小説です。恐らく作品の魅力を伝えきれていないですが、まし読んでない方がいましたら、是非とも御一読してみては如何でしょうか。