【前置き】
どうも、虫虎です。今回は、小説家の金原ひとみ先生の小説3作品の感想を書きます。内容は「蛇にピアス」「ハイドラ」「持たざる者」です。
金原ひとみ先生の描く人のいき過ぎた感情のようなものを読んでいると、もしかするとあり得るかもしれない、或いは何処かであることなのだと感じてしまい恐ろしくなります。狂気的な刺激を感じることができる小説ですね。
以下はネタバレありますので、ご注意ください。宜しくお願いします。
【蛇にピアス】
狂気的暴力的な刺激を感じたい人にお薦めの小説ですね。
世界観が闇すぎて恐ろしいです。
生きる気力もなく、痛みでしか生を感じることのできない女性の苦悩は、僕には刺激が強すぎました。
映画化もされてますが、映像の方が刺激的だと思うので、まずは小説の方を読んでみては如何でしょうか。文量もそれほど多くなくて、読みやすかったですね。
このダークな部屋に不釣り合い極まりない感謝の言葉が、行く当てもなく宙を舞った。
(「蛇にピアス」より)
不気味です。
【ハイドラ】
恋人に対する怖いくらいの依存心が描かれている小説です。相手に依存しすぎると、本当に周りが見えなくなるなと感じます。
新崎さんとの関係は終わっているはずなのに、彼に執着し、側にいようとする早希の姿は、読みながら分かるようで分からない怖い存在に思えました。
太陽のような存在の松木さんに言い寄られるも、結局、新崎さんのところへ帰る早希の様子は読後、とても鬱々としたものが残りますね。
【気になった表現】
人の悪意に晒された時、彼は強くなって自信を身に付けていくのだろうか。それとも私のように小さく縮こまっていくのだろうか。
(「ハイドラ」より)
人の悪意に晒された時、それを自己成長に繋げれないと、やられ損でやるせない気持ちになりますね。
【僅かなことで崩れる関係性】
でもちょっとした何かが、例えば時計の秒針が左に回り始めたり、灰皿の中から蟻が一匹出てきたり、いや、例えば私のデスクに置いてある依頼書か何かであろう一枚のプリントが、エアコンの風によってはらりと床に落ちたり、そんなひょんなことが起こったら今すぐ松木さんのマンションに駆け出すだろうと分かっていた。」
(「ハイドラ」より)
もうほんの些細なことで崩壊する人間関係の表現です。綱渡り的な関係性を続けていくのは辛いですね。
綱渡り的関係性に陥らないように日頃から人間関係には気をつけていかなければならないですね。
【持たざる者】
自分の中に大きな出来事が起こった時、人はどんな風に人生を歩んだ行くのかということを考えさせられる小説です。
この小説は四人の主人公から物語が繰り出されています。
修人は東日本大震災をきっかけに同じ価値観を持たざる妻に思い悩む。
千鶴は子どもの死をきっかけに周りの目を気にし続けた自分を思い返しながら、周りを気にする感情を持たざる妹のエリナと比較してしまう。
エリナは震災をきっかけに自分の人生がその流れに逆らえないものだと悟って楽しさ感じる感情を持たざることに諦念する。
朱里はイギリス駐在や親戚問題をきっかけに自分の断固とする意思を持たざることに嫌気を感じる。
そんなそれぞれの生き様が描かれています。
四人の視点に加えて、四人の主人公を別の主人公が別視点として捉えているのが、登場人物を違う角度からも読み取ることができて、深掘りできていくのが面白かったですね。
何かが足りれば何かが欠けるもんだよね
(「持たざる者」より)
【まとめ】
以上、金原ひとみ先生の小説の3作品の感想でした。非常に刺激のある読書体験でした。
読んだことない方おられましたら、是非読んでみては以下がでしょうか。